NDフィルターは、動画に必要?
そう思ったことはありませんか?
NDフィルターは、カメラに入る光の量をコントロールするツールです。と聞くと、なんだか専門的に思えるかもしれません。が、実はYouTubeやVlog、旅動画。さまざまな動画コンテンツでも頻繁に使われています。
そこで、今回の記事では
今回の記事で分かること
- NDフィルターの基本的な役割
- 選び方
- 使い方
- 初心者におすすめの製品
までを、実体験と本音を交えてわかりやすく解説します。
NDフィルターについて「ざっくりでもいいから理解したい!」と思っているあなたに、ぜひ読んでいただきたい内容です。

執筆者
この記事は、動画制作・デザインを手がける統合クリエイティブスタジオ|ワイラボの代表が執筆しています。普段は企画やディレクションの立場から、現場チームと連携して、デザインディレクション、イラスト制作、映像制作に関わっており、その経験から得た視点で、分かりやすさを心がけてお伝えします。
1. NDフィルターが動画に必要な理由
NDフィルターは、適切なシャッタースピードを確保するために欠かせない存在です。とはいえ、
初めての方にとっては「何のために使うの?」と疑問に思うことも多いでしょう。
この章では、NDフィルターが、なぜ動画に必要なのか?を解説します。
①NDフィルターの役割と基本構造
NDフィルターは、カメラに入る光の量を減らすための「サングラス」です。
カメラの前に装着することで、露出オーバーを防ぎます。そして、絞りやシャッタースピードなどの設定を自由に調整できるようになります。
その仕組みはとてもシンプル。濃度の異なるガラスやプラスチック製のフィルターを使って、光を均等にカットします。これにより、色味を変えずに明るさだけを落とすことができます。
②動画撮影にNDフィルターが使われる理由
NDフィルターが、動画でも使われる最大の理由は「自然なモーションブラー」を得るためです。
映画のような滑らかな動き。それは、「シャッタースピードはフレームレートの2倍程度」にします。
たとえば、フレームレートが1/30秒なら、シャッタースピードは1/60秒です。
しかし、日中の屋外では、これだけシャッタースピードを落とすと露出オーバーになります。そこでNDフィルターを使います。そのことで、意図的に光量を抑えて「適切な明るさ」と「理想的な動き」の両方を実現するのです。
実際、NDフィルターなしでは、どうなるか?どうしてもシャッタースピードを速くするしかありません。その結果、カクカクした不自然な映像になります。特に動きのある被写体。または、手ブレ補正が強めに効くカメラでは、映像の質感に大きく差が出ます。
参考記事:モーションブラーとは?
③NDフィルターを動画で使わないとどうなる?
NDフィルターを使わないと、明るい場所ではシャッタースピードが速くなりすぎます。
その結果、映像が「パラパラ漫画」のように、動きがギクシャクします。
特にスマホやエントリークラスのカメラでは、自動でシャッタースピードが調整されます。そのため、露出オーバーや動きの違和感が起こりやすくなります。
また、背景をボカしたくても、NDフィルターがなければ絞りを絞るしかありません。その結果、ボケが浅くなります。これではせっかくの表現力も半減です。
以下の表は、NDフィルターの有無でどう映像が変わるかを比較したものです。
| 条件 | NDフィルターあり | NDフィルターなし |
|---|---|---|
| 明るさ調整 | 自由に可能 | シャッターを速くせざるを得ない |
| 映像の動き | 滑らか、自然なモーション | カクカク、チラつきやすい |
| 背景のボケ感 | 強調しやすい | 絞りで対応→ボケにくくなる |
NDフィルターは、「見た目の質感」と「表現の自由度」に直結します。プロだけのツールではなく、むしろ初心者にこそ必要なものと言えるでしょう。
2. NDフィルターの種類とそれぞれの特徴
NDフィルターの種類は意外と多いです。
この章では、動画撮影で選ぶべきNDフィルターの種類と特徴を解説します。
NDフィルターを動画で使う ①固定フィルターと可変フィルター
光の状態に合わせて、その都度、フィルターを交換したりする(一枚もの)。または、一枚で明るさを調整できる可変フィルターもあります。
下の写真は、一眼レフ用の外付け可変フィルターです。フィルターの外周には、調整ダイヤルがあります。それを回すことで、フィルターを明るくしたり、暗くしたりできます。
向こう側の見え具合が違うのがわかると思います。


屋外の撮影では、NDフィルターは必須になります。夏の日差しは、特に強烈です。標準装備してない機種をお持ちの方は、NDフィルターを必ず用意してください。
NDフィルターを動画で使う ②固定NDフィルター
固定NDフィルターは、あらかじめ決まった濃度(ND値)で光を減らす。もっともシンプルなタイプです。
たとえば、ND8なら常に光を1/8に抑え、ND64なら1/64に抑えます。操作が不要なため、撮影中の設定ミスが起きにくく、色の再現性も安定しています。
最大のメリットは「画質が安定している」こと。色かぶりやムラが少ないため、映像編集時にも困りません。また、レンズに一度装着すれば、あとは撮るだけというシンプルさも魅力です。価格も比較的安く、複数のND値を揃えれば幅広い撮影に対応できます。
しかし一方で、濃度が固定されているぶん、光の変化に柔軟に対応できません。屋外での撮影中、天気や、場所を移動するたびにフィルターを交換する必要があります。でも、正直かなり面倒です。
撮影現場で「今、ちょうどいいNDがない…」という経験をしたことがある人は多いはずです。
NDフィルターを動画で使う ②可変NDフィルター
まず、可変NDフィルターについて、お伝えしましょう。
は、フィルターを回すことで濃度を自由に変えられるタイプです。
ND2からND400まで、1枚で複数枚分のNDをカバーできるものもあります。屋外ロケなど光の変化が激しい場面では、とにかく便利です。
操作も簡単で、露出を見ながらリアルタイムで濃度を微調整できます。そのため、映像制作者には重宝されます。
ただし、便利さの裏には「クセ」もあります。まず、濃度を上げすぎるとX状のムラ(Xクロス)が発生することがあります。これはフィルター内部の偏光構造によるもので、特に広角レンズで顕著に現れます。高品質な製品でも完全に防げない場合があるため、注意が必要です。
さらに、安価な可変NDでは色かぶりが強く出ることも。撮影時は気づかなくても、編集で色補正が面倒になることが多いです。レビューをしっかりチェックしてから購入するのが安全です。
NDフィルターを動画で使う ④マグネット式・スライド式など
最近注目を集めているのが「マグネット式NDフィルター」です。
これは、レンズに専用のマグネットリングを装着。そして、NDフィルターを磁力でワンタッチ装着できるタイプです。こちらは、取り外しが一瞬で済みます。そのため、固定NDのデメリットである「交換の手間」を大幅に軽減できます。
実際に使ってみると、NDフィルターの付け外しがノンストレスになるのは驚きです。撮影テンポがまったく違ってきます。
また、「スライド式NDフィルター」も一部で人気があります。これはフィルターホルダーに板状のNDをスライドさせて入れるタイプです。こちらは、主に風景写真用として使われてきました。が、動画でも独自の濃度調整が可能です。ただし、携行性や手軽さでは他のタイプに劣るため、ニッチな選択肢です。
3. NDフィルターの選び方と購入時のチェックポイント
初心者が、NDフィルターを動画で使う時、その選び方を以下の表にまとめました。
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| フィルター径の確認 | レンズ先端に記載されたサイズ(例:φ67mm)をチェック |
| ND値の選定 | 使用シーン(日中・夕方・屋内など)に応じた濃度(ND8, ND16など)を選ぶ |
| 可変式or固定式 | 撮影スタイルに合わせて選ぶ(手軽な可変式/画質重視の固定式) |
| 価格と品質のバランス | 安価すぎる製品はリスクあり。信頼できるブランドを選ぶのが安心 |
| 使用機材との相性 | 広角レンズではケラレやムラが出やすいため、事前の相性確認が重要 |
それでは、それぞれの要素について具体的に見ていきましょう。
①ND値(濃度)の選び方と目安
NDフィルターを動画が使う時、重要なのが「ND値」です。
これはどれだけ光をカットするかを示す数値で、数字が大きいほど光を強く抑えます。たとえば、ND8は光を1/8に、ND64は1/64に減らすという意味です。
動画撮影では、日中屋外ならND16〜ND64が基準になります。曇りの日や朝夕ならND8程度で十分なこともあります。以下の表に、ND値の目安をまとめました。
| ND値 | 光量の減少割合 | 主な使用シーン |
|---|---|---|
| ND4 | 1/4 | 室内、薄曇りの屋外など |
| ND8 | 1/8 | 明るい曇天、午前中の屋外 |
| ND16 | 1/16 | 日中の屋外、背景をぼかしたい時 |
| ND64 | 1/64 | 強い日差しの下、ボケ重視の撮影 |
数字が大きいほど価格も上がる傾向にありますが、まずは「よく使うシーン」で考えるのが現実的です。
可変NDなら幅広く対応できますが、上でも述べたように画質面ではリスクもあるため、自分の撮影頻度や用途に応じて選び分けるのが賢いやり方です。
②レンズ径の確認とステップアップリングの活用
NDフィルターを動画で使う際は、レンズの「フィルター径」に合わせて購入します。
これはレンズ先端の〇mmという表示を見ればわかります。たとえば「φ67mm」と書いてあれば、67mm径のフィルターが必要です。
ただし、複数のレンズを使う場合、すべてに合うNDフィルターを揃えるのは非効率です。そんなときは「ステップアップリング」を使うと便利。大きめのNDフィルターを他の小さい径のレンズにも装着可能になります。
③価格帯の違いとコスパの良い選び方
NDフィルターの価格はピンキリです。
安いものでは1,000円台から、高品質な可変NDでは1万円を超えるものもあります。価格差の理由は、ガラスの質・コーティング・色再現性・耐久性などです。
安価なNDフィルターは、色かぶりやゴースト、X状ムラなどの問題が起きやすいです。最初の1枚としては悪くありません。が、映像にこだわるならやや高価でも信頼できるブランドを選ぶ方が後悔しません。
逆に、SNS用に軽く撮影する程度なら、価格重視で選んでも問題ありません。
4. NDフィルターの使い方と撮影時の注意点
NDフィルターを動画で、どう使うか?
ただ装着するだけでは本当の効果は得られません。また、逆に誤った使い方で映像が台無しになることもあります。
この章では、NDフィルターを動画で使った際の落とし穴と、その対策を解説します。
①NDフィルターと動画撮影|シャッタースピードとの関係
動画撮影においてシャッタースピードはとても重要です。
自然な動きを得るためには、フレームレートの約2倍が目安です。たとえば30fps(1秒間に30コマ)なら、シャッタースピードは1/60秒が理想です。この「シャッター角180度の法則」は、映画的な滑らかさを出すための基本です。
しかし、晴天の屋外でこのシャッタースピードは維持できません。露出オーバーになるのが現実です。そして、絞りやISOを下げても限界があります。そのため、光を抑える手段としてNDフィルターは必須です。
②可変NDで起こるXムラの原因と対策
可変NDフィルターは便利です。
が、濃度を上げすぎると画面の中央に「X状のムラ」が出ることがあります。これがいわゆる「Xクロス」と呼ばれる現象です。原因は、フィルター内部の2枚の偏光ガラスが干渉して光を不均一にカットするから、です。
この現象は特に広角レンズで起こりやすいです。とくに、空や地面など均一な色の背景があると目立ちます。撮影後に気づいても修正が難しいため、撮影時に注意が必要です。
対策としては、まず「NDの濃度を上げすぎない」ことが第一です。可変NDのダイヤルには「MIN」や「MAX」などの目安が書かれていることが多いです。が、MAX近辺は避けるのが無難です。
また、信頼性の高いメーカーのNDフィルターを選ぶことも重要です。
③色かぶり・光量ロスなど、使用時の課題と対応策
NDフィルターを動画で使うと、色味に偏りが出たりします。また、全体が暗く沈んでしまうことがあります。
これは「色かぶり」と呼ばれ、特に安価なフィルターで顕著に出る現象です。青っぽくなったり、赤みがかったりして、映像全体が不自然に見える原因になります。
この色かぶりは、ホワイトバランスをマニュアルに設定して補正するのが一般的です。ただし、現場での修正が難しい場合は、編集でのカラーグレーディングが必要になります。初心者には少しハードルが高いかもしれません。
5. NDフィルターの効果と作例から学ぶ使い方
NDフィルターは「光を減らすだけの道具」と思われがちです。
が、実際はそれ以上の価値があります。
この章では、NDフィルターを動画で使った際の効果的な使い方を紹介します。
①背景ボケと被写界深度のコントロール
動画を「写真のように見せる」か「映画のように見せる」か。
この分かれ目の一つが背景のボケ感です。背景がしっかりボケていると、それだけで映像に奥行きが生まれ、主役が際立ちます。しかし、明るい日中では開放絞り(F1.8やF2.8)で撮影すると、すぐに露出オーバーになります。
NDフィルターがあれば、明るい環境でも絞りを開けたまま撮影できます。これにより、背景は美しくボケ、被写体がより強調された映像を撮ることができます。ポートレートやVlogでも、NDがあるのとないのとでは映像の印象がまったく変わります。
②モーションブラーで疾走感を演出
映像に「動き」を感じさせたいとき、シャッタースピードの設定は非常に重要です。
NDフィルターを動画で使うことで、シャッターを意図的に遅くし、モーションブラー(動きの残像)を生むことができます。これが「映像の滑らかさ」や「疾走感」を引き出す鍵になります。
たとえば、自転車で走るシーンを撮るとします。NDフィルターなしでは、シャッターが速くなりすぎてタイヤの回転や足の動きが一コマごとに止まったようになります。しかし、NDを使ってシャッターを1/60秒に落とすと、ブラーが加わって動きに流れが生まれます。これだけで映像の印象は劇的に変わります。
③逆光・明暗差の激しい場面での使い方
動画では、朝日や夕日の逆光シーンなど「明暗差が極端な場面」がよく登場します。
こうした場面では、空が白飛びしたり、逆に人物が真っ黒になってしまったりすることがあります。NDフィルターを動画でもうまく活用すれば、これらのバランスを取ることが可能です。
たとえば、夕日をバックに人物を撮る場合。NDフィルターを使えば、空の露出を抑えながら、人物もライティングやISO調整でしっかり映し出せます。特に「ND+リフレクター(レフ板)」の組み合わせは最強で、自然光を活かしながらドラマチックな映像を作ることができます。
さらに、NDを使うと空のディテールを残せるため、編集でのカラーグレーディングが非常にしやすくなります。ダイナミックレンジを広げるという意味でも、NDフィルターは逆光やハイコントラストな場面の撮影に強い味方となります。
動画でNDフィルターを使った例
NDフィルターを動画で使うシーンの例をひとつご紹介しましょう。
それは、屋外から室内に移動する撮影する場合です。外は強烈に明るくて、中は暗いという状況です。そんなとき、屋外での撮影では、あらかじめNDフィルターをかけておきます。
そして室内に移動した瞬間、NDフィルターのスイッチを切って、明るさを調整します。
テレビの生放送などで、編集が効かない場合、こんな映像が流れるときがあります。チェックしてみてください。
6. 初心者におすすめのNDフィルター
NDフィルターを動画で使う時、おすすめのフィルターをご紹介します。
ここでは、一眼レフなど、レンズ交換式カメラ用のNDフィルターに限定しました。
とくに、初心者にも扱いやすく評価の高い製品です。
①K&F Concept バリアブル ND2-400(可変ND)
はじめてのNDフィルターとして一番人気。
それが、K&F Conceptの可変NDフィルターです。ND2〜ND400の範囲で自由に濃度調整ができ、1枚でさまざまな光量に対応できるため、これ1つあれば日中の撮影から夕方の撮影まで幅広く対応できます。
価格は3,000円前後と手が出しやすく、レビュー数も多く評価が安定しているため、安心して選べる製品です。濃度MAXにするとややムラが出る場合もありますが、初心者が練習するには十分な性能を備えています。
Amazonでの評価も高く、「初めてのNDならコレ!」と多くのユーザーに推奨されている製品です。
②Kenko PRO1D プロND8(固定ND)
固定NDで安定した画質を求めるなら、国内メーカーKenkoのPRO1Dシリーズが定番です。
ND8は日中でも自然光の中で背景をぼかしたいときに最適で、明るさを適度に抑えつつ色の変化が少ないのが魅力です。
特に色かぶりが少ないので、ホワイトバランスを厳密に気にしたい方にも向いています。価格は4,000円〜5,000円程度とお手頃ながら、長く使える品質の高さがあります。
また、Kenko製品は国内サポートがしっかりしている点でも初心者には安心です。
③NiSi TRUE COLOR ND-VARIO(上位モデルの可変ND)
少し予算に余裕がある方には、NiSiのTRUE COLOR ND-VARIOをおすすめします。
価格帯は2万円前後とやや高めですが、「色かぶりが非常に少なく、Xムラも起きにくい」と高い評価を得ています。
このモデルはプロのYouTuberや映像制作者にも支持されており、「初めてだけど絶対に失敗したくない」という方には理想的な選択です。レンズ径のラインナップも豊富なので、自分の機材にぴったり合わせられます。
一度良いものを買って長く使いたい、という方にこそ選んでほしい1本です。
NDフィルターを動画で使う|まとめ
NDフィルターは、ただ光を抑えるための道具ではありません。
正しく使えば、動画に映画のような奥行きと滑らかさを与えてくれる、非常に強力な表現ツールです。
最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、
この記事を参考に自分に合ったNDフィルターを選び、ぜひ実際の撮影でその効果を体感してみてください。
>> Illustrator(イラストレーター)の使い方④パスの作り方|文字パレットと段落|グラデと透明
今回も最後まで読んでいただいて、ありがとうございます!






