たとえば海水浴場では白く見えた肌でも、スキー場に場所を移したら、雪の中ではそれほど白く見えないように、写真撮影の環境によって、その被写体を白く感じる基準が変わるのを補正する機能。それがホワイトバランスです。
カメラのホワイトバランスの調整方法
ホワイトバランスはオートじゃダメか?
どんな時に手動にすればいいのか?
今回はホワイトバランスの設定方法や色温度の説明、撮影シーンごとの活用法などを解説します。
目次
カメラのホワイトバランスを調整した時としない時の違い
ここでは、ホワイトバランスを調整した時としない時の違いやシーンごとにどのような設定がよりベターかを見ていきましょう。
温かみのあるレトロな雰囲気を演出したい時
一眼レフカメラで通常のオートで撮影した場合、夜だと黒は黒く映るような、見たままの景色に近い色味で撮影ができます。しかし、こちらのホワイトバランス設定を曇天に変更することで暖かみあふれる、レトロ感の強い写真に仕上がります。
また、朝焼けや夕焼けを撮影するとき、オートで撮影するとカメラは白色に近づけるような補正をかけてしまいます。より一層オレンジや赤みを帯びた写真を撮影したい場合は日陰や曇天の設定をすることで、見た景色そのままの写真が撮影できます。
夜景を撮影する時
AWBでも十分に見たままの色味を表現してくれます。
ですが、夜の街並みはホワイトバランスを白熱電球や蛍光灯など、色温度が低い設定をすることで、青みが出て無機物で人工物のようなドラマチックな印象に仕上がります。
カメラの設定だけでより雰囲気のある夜景が撮影できます。
星空を撮影する時
一眼レフカメラやミラーレスカメラでは星空も撮影できます。星空はホワイトバランスの変更ひとつで雰囲気がかなり変わります。
例えば白熱電球や蛍光灯など、屋内の低い色温度を白と認識させてから、屋外の写真を撮影すると、クールで冷たい印象の写真になります。その逆で、設定を曇天や日陰など色温度が高いものに調整してからだと優しい雰囲気の星空に。また、朝日が登る直前や、夕日が沈んだばかりの夜空のように撮影ができます。
設定一つで一味違った幻想的な写真がカメラで撮影できます。
料理などの食品を撮影する時
料理は基本的には暖かくて美味しいもの。その美味しさを最大限に表現するときは見たままの色味に近いか、オレンジなど暖かみが感じられる写真に仕上げるのがベストです。例えばカメラのホワイトバランスの設定を曇り、白熱電球にそれぞれ設定した場合。
曇りの設定時は暖かみある美味しそうな写真に仕上がりました(上の写真)。
しかし白熱電球に設定した場合は冷めていて、食欲がそそられない色味に仕上がりました(下の写真)。
料理の写真はジャンルにもよりますが一般的にオレンジや黄色みに寄ったホワイトバランス調整をすることで、一層美味しさを引き立たせる写真になります。
カメラのホワイトバランスはどうやって調整するの?
それでは、具体的なホワイトバランスの調整の仕方を見ていきましょう。ここでは、各メーカーの一眼レフカメラの設定の仕方を見ていきましょう。
Canonの一眼レフカメラやミラーレスカメラの場合
カメラのボタンにWBの文字があれば、そこを押すとホワイトバランスの項目が出てきます。
そこから好きなホワイトバランス設定を選ぶことで変更が可能です。
また、メニューボタンからも「撮影設定」のページからホワイトバランスを変更することができます。
ニコンの一眼レフカメラやミラーレスカメラの場合
カメラのボタンの「i」ボタンを選択します。
マルチセレクターで「ホワイトバランス」を選択すると、そこから好きなホワイトバランス設定を選ぶことで変更が可能です。
また、メニュー操作でもホワイトバランスの変更は可能です。撮影メニューのページからホワイトバランスをお選びいただけます。
SONYの一眼レフカメラやミラーレスカメラの場合
メニューから変更が可能です。「撮影設定」のページから「ホワイトバランス」を選択すると、そこから好きなホワイトバランス設定を選ぶことで変更が可能です。
オリンパスの一眼レフカメラやミラーレスカメラの場合
OKボタンを押すことによってライブコントロールが表示されます。
ホワイトバランスを選択すると、そこから好きなホワイトバランス設定を選ぶことで変更が可能です。また、メニュー操作でもホワイトバランスの変更は可能です。
カスタムメニューのページからホワイトバランスをお選びいただけます。
ホワイトバランスは自動じゃダメなのか?
人間の目は、とても優秀です。どんな場面でも白を白ときちんと認識できます。もちろんカメラの機能も優秀なのですが、さすがに人間の目ほどは高性能ではありません。そのためカメラには、場面ごとに白を白く認識させる必要があります。では、どうすればいいのでしょう?
ホワイトバランスの役割
そこで、ホワイトバランスを調整して撮影時の光の色を補正します。カメラは白色を白色と認識する力を持っていないので、撮影する人間側がカメラの設定を変更しないといけません。
でもご安心ください。一眼レフのカメラには間違いなく備わっている機能ですので、その設定方法も難しくありません。
まずは写真の色味を本来の色に合わせること。それがホワイトバランスの基本的な役割だと覚えておきましょう。
覚えておきたい色温度
さらに、ホワイトバランスを語る上で欠かせないのが色温度という概念です。色温度とは、光の色を数値化したもので、ケルビン(単位をKと表す)と単位で表します。
光源の明るさや温度とは関係なく、あくまでも光源から発せられた光の色の尺度のことです。色温度の単位(K)が低いほど写真の色味は暖かく、暖色系に。単位が高いほど写真の色味は冷たく、寒色系に近づきます。
例えば自然光での朝日などは2000K、太陽光はおよそ5000K前後、白熱電球などの蛍光ランプは2800Kなど光の色によって様々な値のKが存在します。
ホワイトバランスの設定方法は?
一眼レフカメラなどで設定できるホワイトバランスにはオートホワイトバランス(AWB)とマニュアルホワイトバランス(MWB)があります。
AWBは様々なシーンで自然な色合いになるようにカメラが自動で設定してくれる、大変便利な設定です。
MWBでは、被写体の白さをより正確に表現することができます。AWBでは正しい色を表しきれない時にとても最適な物ですが、太陽の光の色が変わるにつれて、その都度設定を変更する必要があるので注意です。
ホワイトバランスは写真の白色以外も補正する
ホワイトバランスとは白を正しく白く写すための機能ですが、ほとんど白色が存在しない被写体の場合にはどうなるのでしょうか?という疑問はありませんか?
そういった白色が存在しない被写体の場合でも、カメラのホワイトバランスを調整は必要です。なぜならホワイトバランスは、被写体にあたった太陽光や電球など、その光の反射に対して調整されるものだからです。
写真の中に白色がほとんど存在しなくても安心せずに、かならずホワイトバランスを調整して、撮りたいイメージや本来の色味に近い設定を心がけましょう。
ホワイトバランスは、どんな時に手動にする必要があるの?
基本のカメラ設定はオートでOK
基本的には、撮影環境に最適な光源の色の影響による色被りを補正してくれるオート設定でOKです。撮影中、ホワイトバランスに悩んでしまったり、コンスタントに撮影を行いたい場合はいちいちホワイトバランスを変更している暇はありません。そのような場合はオート設定が無難と言えるでしょう。
しかし、AWBは、すべて私たちの思った通りの設定値にはなってくれません。
撮りたい写真のイメージによってはオート設定ではなくカメラの設定を手動で調整することをお勧めします。
シーン別の色温度とホワイトバランスの設定
ここでは、シーン別の色温度についてお話ししましょう。
色温度は、数値が高くなるにつれて、青味が増していきます。反対に数値が低くなるにつれて、赤みが増していきます。
そこで、撮影環境によってホワイトバランスの最適な設定と、一眼レフカメラでも表現できるシーン別の設定をご紹介します。
AWB(オートホワイトバランス)
ホワイトバランス設定をオートにして撮影する時は、被写体が色の偏りが少ないことが望ましいです。
たとえば広い画角からズームした際などに、被写体がある一定の色に偏る場合があります。そうした場合には、思い通りの色味にならない場合があるので注意しましょう。
もちろんホワイトバランスをいちいち変更している暇がない時や、その都度の変更に悩まれてしまう場合には、オート設定にしてしまいましょう。
日陰(7000K)
より強く暖色系の色味を表現してくれます。
晴れた日に被写体が日陰になっている状況に最適です。
カメラでの撮影時、写真全体を暖かく表現しますので、黄色やオレンジに近づけたい写真を撮影したい場合はこちらのホワイトバランスを選択するのがベストです。
曇天(6000K)
暖色系の色味を表現してくれます。撮影時天候が悪く曇っている時に最適です。日陰の設定に比べるとやや抑え目の暖色系設定です。自然な暖かさを加えたい場合はカメラの設定を曇天にすることをお勧めします。
太陽光(5200K)
AWBに近い補正をしてくれます。日中、被写体が自然光に当たっている状況に最適です。
蛍光灯(4000K)
寒色系の色味を表現してくれます。蛍光灯の下で撮影するときに最適です。
電球(3200K)
室内の電球色を白色と認識させて、屋外を撮影した場合、屋外がより強く寒色系の色味を表現されます。かなり青みに近づいた写真になりますので、クールなイメージを持っていたり、無機質なものに近づけたい場合はホワイトバランスをこちらに設定する事がお勧めです。動画での例になりますが、どのくらい違うのか?こちらをご覧ください。
ホワイトバランスの調整によって写真の雰囲気を変える
写真本来の色味ではなく、違った雰囲気を写真に収めたいとき。そんな場合でもホワイトバランスが大活躍します。
例えば通常であれば暖かい光に包まれた夕日の写真。こちらもカメラのホワイトバランスを白熱電球に設定すると青みがかった、写真になります。また、曇りという天候の下で撮影した白味がかった無機物なイメージの写真も、ホワイトバランスを日陰に変えることでセピア調のアンティークな雰囲気に変わります。
このように写真の雰囲気を意図的に変えたい時もホワイトバランスが重要になってくるのです。ここでもわかりやすく動画をお見せします。日中、屋外で青色を白だと認識させて撮影をすると、強制的に夕暮れに見える。という動画です。
jpegでの撮影時にはホワイトバランスに注意!
もしRAWデータ(後から色味を加工できる未加工のデータ形式)で撮影し、編集で色味などを変更する。といった場合にはホワイトバランスはあまり気にしなくても大丈夫です。
しかしカメラによってはそもそもRAWデータで撮影ができない場合や、普段からjpegデータでの撮影をされている方はホワイトバランスに注意しましょう。
適当な設定で撮影すると後から色味を変えるのは難しく、後悔してしまいます。
カメラのホワイトバランスを理解して、ワンランクアップした写真を撮ろう
一眼レフカメラやミラーレスカメラでの写真撮影では、大まかなホワイトバランスから細かなホワイトバランスまで微調整が可能です。後から編集で色味を変えることもできますが、できれば最初からホワイトバランスをきちんと設定して、あとの手間を省きたいものです。
カメラによってどの程度設定ができるかも違いますので、ご自身のカメラをチェックしてみてください。